グアムが沖縄と同じように、海兵隊の受け入れに反対しているのだと言う。
グアムは沖縄の約半分の面積の島だが、30%が軍用地として接収されている。
ここにアンダーセン空軍基地とアプラ港海軍基地というアメリカ屈指の基地がある。
私はグアムには基地問題などは存在せず、住民は米軍が駐留していることで基地経済が活性化して喜んでいるものだと思っていた。
しかし実態は違うと言うのだ。
歴史をたどるとグアムは1898年のスペインとの戦争で勝利したことにより、スペインから強奪したのだが、その後第二次世界大戦中約4年間日本軍に占領された。
現在は準州として扱われ、グアム代表の下院議員は国会で投票権を持たず、住民は大統領選挙にも参加できない。メリットは税金をアメリカ本国に取られないで済むことだが、このあたりの住民感情は大変複雑なのだと言う。
「俺たちは植民地の住民か?なぜ大統領を選べない」
グアムの先住民で最大の人口を持つチャモロ人の心を苛立たせている。
注)グアムは人口20万人弱でこのうち約半数が先住民のチャモロ人。現在は知事が選出されているが、1968年以前は軍政だった。
現在問題になっているのは、2014年までに日米合意に基づき、約8000名の海兵隊がグアムに移転すると言う計画で、これに先立ち軍が行った環境アセスメントで新たな軍用地の徴用と28haに及ぶさんご礁の海の浚渫が必要だと発表された。
「とんでもない。今でも島の面積の30%が軍用地なのに、それがさらに広がり、さんご礁の海がなくなれば観光客が来なくなってしまう」
グアムは住民のほぼ60%が観光業に従事しており、観光資源が最も重要な資源となっている。
当初グアムが海兵隊8000名の受入に賛成したのは、軍用地の拡張やさんご礁の海が埋め立てられるとは思っていなかったことと、移転に伴い、不足していたインフラ整備が進むと思っていたからである。
「日本が移転費用の約6割、6500億円相当を出してくれる。これによって汚水処理、発電施設整備、道路、橋梁の補修が一気に進み、グアムの住環境は格段に向上する」
しかし計画が具体化するにしたがって日本からの拠出金は主として軍関係の住宅整備や港湾の整備に使われ、住民の生活向上にはほとんど回らないことが明らかになってきた。
「なんということだ。得をするのは軍だけか!!」
たまらずカマチョ知事は「4年後の海兵隊8000人の移転期限の延長を求める」という声明を発表した。
注)米軍は軍事予算の削減で兵舎等の住環境の投資が十分できなくなっている。日本政府からふんだくる資金はすべて、不足している軍の福利厚生や軍施設の整備に当てようとしている。
この問題をさらに複雑化させたのが普天間基地移設問題で、「海兵隊の移設だけでもこれだけ問題があるのに、さらに普天間基地のヘリコプター部隊の移設など、とても認められない」という雰囲気になってきた。
社民党の阿部政審会長は「グアムは普天間基地の移設に反対しているが移設費用4000億円をグアムに渡せば、グアム移転を了承するはずだ」とコメントしたが、そうは問屋がおろしそうにない。
移転費用が軍関係だけでなく民生にも回らなくてはカマチョ知事も賛成するわけにはいかないからだ。
「日本政府が資金を上積みして民生費用まで出してくれれば考えてもいい」と言うのが偽らざる心情だ。
しかし、グアムは日本領土ではない。軍の移転費用の他にグアムの民生費用まで面倒を見るのは、日本国民が納得しないだろう。
こうして日本国内だけでなくグアムの住民も普天間基地移設に反対し始めた。
鳩山総理は「腹案がある」と言ったが、実際はますます問題が複雑化している。
おそらく鳩山総理の腹案とは、総理辞任しかないのではなかろうか。
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